今回の登場人物
A紗 30代後半の女性、未婚。
職業:ヨガインストラクター
とあるジムのスタジオインストラクターの
傍ら、個人的に動画配信も手掛けている。
植物が大好きな、ボタニカル女子。
栄養豊富で知られるアサイーを使った
アサイーボウルが大好き。
今回の登場人物
A紗 30代後半の女性、未婚。
職業:ヨガインストラクター
とあるジムのスタジオインストラクターの
傍ら、個人的に動画配信も手掛けている。
植物が大好きな、ボタニカル女子。
栄養豊富で知られるアサイーを使った
アサイーボウルが大好き。
何かと慌ただしい毎日を、淡々と送る日々。
せっかくなら、生活をより豊かにしたい。
ライフスタイルに植物の力を取り入れ、自然に囲まれた空間で、
植物に触れ合いながら癒しを感じ活力を得る。
ナチュラルで少し落ち着いた、ボタニカル・ライフを手に入れたい。
「時間をより優雅に、より心地よく。」
理想の大人の女性に近づく為に、一歩を踏み出した私たちの物語―――。
案内されたマンションには、バブルの名残なのか玄関前に大きな石が置かれていて、外観もなかなか年季の入った感じなのに、ロビーに入った途端、すごく今っぽいおしゃれな空間が広がっている。
担当者さんを先頭に、階段を上っていくと各階ごとにどことなく雰囲気が変わる感覚を覚える。不思議に思い、辺りを見回していると、担当者さんがその様子を見て足を止め、「ここはですね…」と話始める。
「ひそかに昨年末より進めてきました13人のデザイナーによる賃貸プロジェクト《ロイヤルコート嵯峨》になります。」
脇に抱えられた資料の中から、一冊の小冊子を手渡される。
表紙には夕暮れに存在感をむき出しに佇むこのマンションの写真が印刷されている。
「それぞれの個性を持ってリノベーションしてまして。デザイナー達の熱量が感じられるお部屋ばかりなんです。今回、お客様にご紹介させていただくのは5階のお部屋になります。」
担当者さんの心地よい京都弁に立ち止まり、冊子をパラパラとめくり、もくじから5階の表示があるページへと進む。
物件探しに、ひとまずは家賃と間取りしか気にしていなかった私は、そのページのタイトルに目を奪われる。
すると横から彼女の手が伸びてきて、冊子を軽く抑え、私の手元を覗き込む様に肩を寄せた。そして小さく笑うと、「何だかワクワクするね」と言い残し担当者さんの後を追い、歩き出す。
冊子から顔をあげ、彼女の姿が見えなくなる前に、少し暗めの照明で照らされている残りの階段を上り始めた。

5階に着くと、昼間は照明もいらないんじゃないかと思うほど、窓から差し込む光が玄関前の廊下に明るく広がる。玄関扉を開ければ、右側の遮るものがない大きめの窓からも、明るく燦々と陽射しが差し込み、キラキラとしたワンルームの空間が私の目の前に広がった。
それは、階段で少し奪われた体力が一気に回復する瞬間だった。
「ええッ!素敵過ぎない?!」
胸を打たれ固まる私を追い越した彼女のはしゃぐ声で、我に返る。今日は天気が良いからか、部屋全体がより魅力的に見えるのかしら。
靴を脱ぎ何気に横を見ると、天井から床まである大きな一枚の鏡が設置されていた。映った自分の姿に思わずビクッと反応したが、鏡の奥には両手を広げ喜ぶ彼女の背中が写っていて、部屋をより広く感じさせる。反対側の天井に目をやると、そこには花や植物が吊り下げれる様に格子が付いている。
後ろから来た担当者さんが大きな窓に近づき鍵を開け、「私の個人的なおすすめポイントが…」と外へと促す。
「是非、見てください。この物件、ベランダの方が部屋より大きいんですよ。周りにもそんなに大きな建物がないから、景色も最高で、京都をぐるっとほぼ一望できますし。外でBBQしようがプールを置こうが人目気にせず、なんでもできますよ。」

部屋の中をウロウロしながら想像を掻き立てる。
カーテンで仕切ると2部屋になるから、自宅兼レッスンルームに丁度いい。なにより、大きな姿見。改めて購入しなくてもいい。
クイーンサイズのベッドを置いたとしても、カーテンを開ければ窮屈さもなく、十分な広さを確保できる。
クローゼットや容量のある収納がしっかりついているし、彼女の荷物も置けそう。ゆくゆくは二人で住んでもいいかもしれない。それに、これだけ日が差し込む部屋であれば植物を育てるにはとても良い環境だろう。ベランダには十分すぎるほどのスペースが有り余っているので、室内にこだわることなく大きな鉢も置けそう。
しかし、少し気になるのは先ほど読んだ冊子の部屋のテーマタイトルだ。こんなにも明るい部屋に雨の景色?と疑問に思い、もう一度冊子を広げ、説明を読み込んでみる。
この部屋のプロデュースは建築・不動産を手がけている方のようで、「自分が住みたい部屋とは」と書かれていた。その彼曰く、雨の日のしっとりした雰囲気が意外にも似合うらしい。

晴れの日も、雨の日も、春も夏も秋も冬も。全てを想定して、外の景色を眺める。窓越しに見える空が、まるで降り注ぐ様に、様々な気候・天気に合わせてどこまでも広がっている。この快適な部屋の中で、そんな景色を眺めながら、ゆっくり過ごす昼下がり。
この部屋ならきっと、たくさんの植物に触れ合いながら、自然に囲まれた空間で、燦々と降り注ぐ太陽、もしくはしっとり鈍色に染まる雲や、窓を叩く雨音に耳を傾けながら、どんな条件であれ変わらない癒しを感じることができるだろうと、どこからともなく不思議と希望が湧いてくる。
親のことや独立など今後のことを考えて、正直後ろ向きな思いが強かった物件探しが、まるで「大丈夫!」と言わんばかりの勇気を与えてくれる。
部屋の真ん中で、途中まで閉められている間切のカーテンが窓から吹き入れる風により、そよそよと舞う。
湧き上がる気持ちを一旦落ち着かせようと目を閉じると、瞼の裏には二人の生徒さんを前にヨガのポーズを教えている自分の姿が、ぼんやり鏡越しに見えた気がした。
気づけば、そうはっきりと口にしていた。横にいた彼女がその声の大さに目を丸くして驚いている。
同じ声量で「ありがとうございます!」と、担当者さんが爽やかな笑顔と共に答えてくれた。
思わず私も彼女もつられて、笑顔になっている。
「明日の朝一緒に食べる、アサイー買って帰ろうよ!」と彼女が私の肩に手をかけた。
「それ、イイねー!」
答える様に彼女の手を握り、二人で高揚感を共有する。今日の内覧は、一緒に来れて良かったと心から思った。
二人の未来を優しく見守る様に、ゆっくりと優しい夕日が部屋に差し込む。
そう。私たち二人なら、きっと大丈夫!
素敵なボタニカル・ライフが始まる予感しかない!!
【Fin】


